趣味の文芸

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追悼 橋本治

この記事は2019/3/22 アメブロ 「くるみうりのブログ」に掲載したものです。お猫生活ブログの中で書いておりましたが、文芸ブログ開設に伴い移転させています。

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 2019年1月29日 作家で評論家の橋本治さんが亡くなられた。

この何年かご病気なのは知っていたのだが、70才という若さでの訃報に接するとは思わなかった。

 20代の頃、何がきっかけだったのかはまり、「桃尻娘」シリーズや「恋愛論」などの評論を何点か読んだと思う。ずっと読み続けたわけではないが、今でもこの人の強烈な印象は色あせない。初めて垣間見た「天才=スーパーインテリジェンス」の世界だったように思う。東大在学中にイラストレーターとして世に出て、「桃尻娘」で脚光を浴び、その後も小説・評論・古典の現代語訳と幅広く活躍された。

膨大な知識量、縦横無尽な思考のみならず、彼は自分の足元を見つめることのできるスーパーインテリジェンスだった。そうでなかったらこういう形で追悼することはなかったかもしれない。

照れ屋なのか、偉ぶらず、何かちょっと反抗児みたいなキャラクターで世間へのアピーとしては少し残念で、多くの人が言うようにこの人のすごさはもっと認知されてほしい思う。

 この人の評論は頭の回転のまま書いているようなスピード感が半端ない。自分で猛スピードを出しておいて道を間違えて「あれ?」みたいな箇所が時々ある。その勢いに最初は圧倒されるわけだが、じわじわ滲み出してくる優しさというか愛情深さが読み手を引き付ける。

 書評が多い「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」という少女漫画論は私も読んだが、1979年当時少女漫画の評論というのは、斬新で異端だったのではないだろうか?この評論では彼の少女漫画への愛情放出度合が全開だった。こういうモードの彼の文章好きだった。正しい知性の使い方だと感じた。

ここ数年娯楽小説ばかり好んで読んでいたが、久しぶりに戻ってみようと思い、橋本治の古事記 を読み始めた。

ご冥福をお祈りします。

 

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 2020/01/21 追記

彼の死から1年、彼についての記事を度々目にする。彼のような「縦横無人の人」に対して人は少なからず圧倒され引け目を感じ無口になる。死後の記事の多さはそれを物語っているように思われてならない。

                          玖海 有理