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「翔んで埼玉」の次はクワコーを推したい件

この記事は2019/3/03 アメブロ 「くるみうりのブログ」に掲載したものです。お猫生活ブログの中で書いておりましたが、文芸ブログ開設に伴い移転させています。 *********************************************************************************

 

 今「翔んで埼玉」が話題沸騰中である。こちらは映画もさることながら魔夜峰央氏ご本人のメディア登場に驚いた。あの「パタリロ!」の作者としての風格満点であった。

パタリロ!」は、アニメ化される前から当時中学生だった私の周りで熱狂的な信者に愛読されていて、あの歎美的な作風もあって作者は分厚い謎のベールに包まれていた。

あれから40年、ときみまろフレーズが思わず出てしまう。感慨深い。今日美容院で読んだ女性週刊誌に魔夜氏のインタビュー記事が掲載されていて、2011年頃からの出版不況のあおりで収入が落ち、いよいよ家が差し押さえかという時に「翔んで埼玉」があちこちで注目を集め、再ブレークによって負債を完済したそうである。埼玉に救われたと締めくくられていた。いい話だ。

 で、本題である。ぼんやり埼玉の事を考えていて思い出した。次はクワコではないかと。

クワコーとは、奥泉光氏著 「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」の主人公の桑潟幸一のあだ名である。大阪の女子短大から千葉の女子短大に再就職したクワコー先生と彼が顧問をしている文芸部の女子部員たちの物語である。

この小説はミステリーだが謎ときそのもには重きを置いていない。とにかく冴えない教師と元気な女子学生の日常がこの上なく面白い。このクワコーのモデルは失礼ながらおそらく作者であろうと思うし、作者が日々観察している「今時女子」の生態やら言葉がこれでもかと続く様子は久しぶりに小説で大笑いした。ユーモア度は「つかこうへい」レベルかそれを超えるものではないかと個人的に思う。古いが。

 だが根底には文学部教授である作者の地力が見事に光っていて、文体は漱石調であり「坊ちゃん」へのオマージュを感じさせるのである。この作品はかつてアレンジした形でテレビドラマ化されたそうであるが、残念ながら私は見なかった。是非原作に忠実な形での映像化を希望してやまない。

 

                             玖海 有理